第6章 クリッパー 仙崎狂介

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    大地の指先がコメカミに押し付けられた瞬間、男の身体が硬直する。 欲望が渦巻く男の記憶の中に、大地は入り込み、空間に浮遊する数え切れない記憶のピースを見上げ、大地は歯を食いしばった。 『やれるのか!?』 大地は男の記憶全てを破壊し、人として1人では生きて行けないレベルまで、壊そうと考えていた。 大地が拳を握りしめる。 ボウッと青白いオーラが、拳を包み込む様に発光しだした。 大地は目の前に浮遊するピースへ向け、軽く拳を繰り出す。 繰り出した拳から青白い球体が、尾を引きピースへ向け打ち出された。 次の瞬間、狙ったピースが打ち砕かれ、粉々になり空間に散って行く。 「いけるっ!」 拳を握り込み力強く言葉を吐いた。 真っ黒なオーラが大地の身体から、ユラユラと立ち昇り、握り込んだ拳から生まれた、青白い発光体が巨大化して行く。 大地は腰の重心を下げて行き、巨大なボールを投げる様に、上体を後方へ捻(ひね)り、腕が弧を描き青白い球体を打ち出した。 「lapse(消滅)!」 怒りの叫び。 幾千、幾万もの浮遊する記憶のピースへ向け、青白い巨大球体が激突し爆発した。 次の瞬間、目を細める程の光の波が、空間を埋め尽くし、やがて汐が引く様に漆黒の空間に戻る。 見上げれば夜空の星の様に、ピースの残骸が大地の頭上一面に漂っていた。    
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