240人が本棚に入れています
本棚に追加
4、名を捨てた者達
マスターテープの在りかを、ヒゲ面の男の記憶から引きだし、3人の男達の記憶を破壊し終えた大地は、トラックの荷台から降り立った。
[パチパチパチ・・・]
「見事な手際でした」
闇の奥で突然湧いた拍手に、大地が身構える。
「お忘れですか、私の声を」
闇の中を砂利を踏む靴音が近付き、大地に声を掛けて来た。
やがて荷台から漏れる光の中に、近付いて来た男がその姿を曝(さら)す。
大地は目を見張った。
「あんたは、仙崎、狂介!?」
新宿のホテル街で偶然遭遇した、1人の自称能力者、仙崎狂介が大地に近付いて来ていた。
「素晴らしい、命を奪う事無く、人一人
をこの世から抹殺なさった。
是非とも私どもの元へ来て欲しいのだ
が?」
冷たい眼差し、薄く笑った口元、心が読めぬ男が大地を賞賛している。
「あんた何が言いたい!
脅しなら無駄だぜ、俺は何もやっちゃい
ねぇ」
言葉を返しながら、仙崎が大地の間合いに入るのを待つ。
『後1歩、奴の懐へ飛び込めれば、
俺の勝ちだ』
「私はここで足を止める、残念、後1歩
私が足を踏み出せば、君の間合いだっ
た、勝てると考えた様だが」
いつの間にか微笑を消した仙崎の唇が、大地を凍り付かせる様な言葉を吐いた。
最初のコメントを投稿しよう!