240人が本棚に入れています
本棚に追加
男が玄関ドアから出たのを見計らい、伸夫は足音を殺し、男が出て行ったドアを薄目に開き、そっと廊下を覗く。
エレベーターホールの手前の角で、ホールを覗(うかが)う男の背中が伸夫の目に飛び込んで来た。
『うん!』
部屋で顔を合わせた時とは違う、男の醸(かも)し出す雰囲気に違和感を感じ、伸夫は靴を履き廊下に静かに滑り出る。
ホールへと消えた男を追う様に、伸夫は男が一時佇んでいたホールを覗(うかが)える角まで、足音を殺し急いだ。
そっと覗いた伸夫の視線の先で、男はエレベーター前で辺りを警戒する、鋭い視線を向けていた。
『あのオッサン、、、俺達の前で演技して
やがったな!
うん、あれ!?』
下りのエレベーターが着きドアが開くと、男は大股にエレベーターに乗り込んで振り返り、威厳(いげん)の有る表情でボタンを押す。
様子を覗(うかが)っていた伸夫に、その顔を晒(さら)した。
『クソッ!あのオッサン顔を俺達に印象
付け無ぇ様に、やっぱりフリしてやがっ
た。
しかし、何処だったかな?確かに俺でも
知ってる顔なんだが、テレビ、いや週刊
誌だったか!?』
エレベーターの扉が閉じるまで、伸夫はジッと男の顔を、ホール入口の角から見ながら、男の素性を思い出そうとした。
最初のコメントを投稿しよう!