第1章 顔の無い男

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「ヨッと!フゥー、ホトケになると、 こんな細っこい女でも、ひと苦労だぜ」 大理石のテーブルの脇から女の体を、浅井は離れた絨毯の上に運んだ。 仰向けに寝かせた女の横で、片膝を着いて改めて死体の様子を眺める。 「即死だったと見えるな、それも事故死 って所か? だったらサツに届けりゃ、、、オット、訳 ありだから俺達に話しが、舞い込んで来 たんだった! しかし、死ぬには勿体無ぇ玉だったんだ ろうな」 仰向けに横たえた女の死体の、出血した血も固まった、傷口を指先でなぞりながら、ひとり呟いた。 「この女、どう言う状況だったのか判ら 無ぇが、テーブルの縁(へり)に思いきり 額を打ち付けたな。 テーブルの縁が額に減り込んで、パック リ割れたって所か、で、そのままテーブ ルに前のめりに倒れた勢いで、絨毯まで 上半身が滑り落ちた。 打ち付けた瞬間逝っちまったか!? 苦しまずに済んだだけ、良かったんかも な。 だが、何でこの女両手をテーブルに着い て、受け身を取るなりしなかったんだ そうすりゃあ?」 目の前に横たえた女が、いかにして死んだのかを、浅井はテーブルの縁に微かに残る血糊(ちのり)と、女の頭が縁(へり)を擦(こす)って、着いたのだろう血の痕(あと)から、女に何が起きたのかを、読み取っていった。    
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