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「ヨッと!フゥー、ホトケになると、
こんな細っこい女でも、ひと苦労だぜ」
大理石のテーブルの脇から女の体を、浅井は離れた絨毯の上に運んだ。
仰向けに寝かせた女の横で、片膝を着いて改めて死体の様子を眺める。
「即死だったと見えるな、それも事故死
って所か?
だったらサツに届けりゃ、、、オット、訳
ありだから俺達に話しが、舞い込んで来
たんだった!
しかし、死ぬには勿体無ぇ玉だったんだ
ろうな」
仰向けに横たえた女の死体の、出血した血も固まった、傷口を指先でなぞりながら、ひとり呟いた。
「この女、どう言う状況だったのか判ら
無ぇが、テーブルの縁(へり)に思いきり
額を打ち付けたな。
テーブルの縁が額に減り込んで、パック
リ割れたって所か、で、そのままテーブ
ルに前のめりに倒れた勢いで、絨毯まで
上半身が滑り落ちた。
打ち付けた瞬間逝っちまったか!?
苦しまずに済んだだけ、良かったんかも
な。
だが、何でこの女両手をテーブルに着い
て、受け身を取るなりしなかったんだ
そうすりゃあ?」
目の前に横たえた女が、いかにして死んだのかを、浅井はテーブルの縁に微かに残る血糊(ちのり)と、女の頭が縁(へり)を擦(こす)って、着いたのだろう血の痕(あと)から、女に何が起きたのかを、読み取っていった。
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