第1章 顔の無い男

2/27
前へ
/270ページ
次へ
■■■ ■ 「私だ、電話をする事など 無いと思っていたのだが・・・」 [お久しぶりです、先生。 20年になりますか、バブルの頃は先生 に儲けさせて頂き、今の私が有る様な 物ですから、あの頃が懐かしい。 ところでどうなされました、先生程の方 が今更私の様な者(もん)に、電話をお掛 けになるなんて!?] 「死体を、ひとつ、処分したい」 [20年ぶりのお電話が、 乗っけからそんな話とは、 脅かしっこ無しにしましょうや、 ねぇ先生!] ■ ■■■ ■ 「あ、兄貴、大丈夫スかね?」 「馬鹿、ちゃんと前見て運転しねぇか! スピード出し過ぎんなよ、下手(へた)こ いて止められた日にゃ、2人して塀の中 だ! 笑え無ぇ話しに成っちまう」 「はぁ、う、うわぁー!!」 ■ ■■■ ■ 大パノラマを眺める薄暗い観覧席で、男はマグロの回遊が作り出す、銀色の光の河に目的を忘れた様に、魅入っていた。 「お待たせしました、仙崎狂介です」 男が座る席の傍(かたわ)らに、音も無く近付き、名を告げる若い男に、一瞬身体を硬直させた男は、声の主を見上げた。    
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!

240人が本棚に入れています
本棚に追加