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「アッ!思い出した、
あのオッサンの正体」
「オッ、思い出したか、よしよし、
でっ誰だった?」
あらかた女の顔を被(おお)っていた
血を拭き取った浅井が、目を細め訊ねる。
「それが偉え大物ス!現民自党現職の法
務大臣、相澤ナントカってオヤジっス」
「ホォ~」
伸夫の答えに、女に掛けた情(なさ)けを払拭(ふっしょく)する程の、ヤクザの本性が、浅井の顔に表れ始める。
「クククッ、金が向こうから転がり込んで
来る、音が聴こえねぇか伸夫!
この事誰にも言うんじゃ無ぇぞ。
さぁーて、このベッピンの撮影会にも
力が入るぜ!」
綺麗に血を拭き取った女を見下ろし、浅井は再び携帯で写真を撮り始めた。
「ア、兄貴、写真なんて撮ってどうするん
で?」
「フッ、今は本部からの御達示(おたっし)
だからよ、素直に動くだけよ!
本部には内緒であのオッサンと、この女
の事を調べておく、ほとぼりが冷めた頃
を見計らって、俺とお前ぇで動く。
この写真と集めた証拠をネタに、あのオ
ッサンに金を産む、ニワトリを演じて貰
うのよ!
クククッ、なぁ伸夫、俺達ゃあツイてた
ぜ!アッハハハハ、ヒィヤヒィヤヒィ
ヤ・・・」
「はぁ?」
下卑(げび)た笑いに、見え隠れするヤクザの本性に、『これがヤクザか』と微かに胴震いをして、頷く伸夫だった。
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