第1章 顔の無い男

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「兄貴、行き先、組(うち)の産廃事業所 (産業廃棄物事業所)で良いんスよね?」 マンションの敷地を出た軽トラックは、右にウインカーを出し、坂道を下り始める。 「あぁ、新目白(通り)を真っ直ぐ行って、 関越に乗りゃあ後は花園で降りるまでは 1本道だ! 降りてからは俺がナビするからよ」 くわえたタバコに火をつけ、助手席で首の後ろを揉(も)んでいた、浅井が答える。 日曜日の夜も11時を過ぎた時刻の街は、早い眠りに就(つ)いた様に、静まり返っていた。 軽トラックは坂を下り終えると、ジグザグに入り組んだ細い道を進み、神田川に架(か)かる小さな橋を渡る。 新目白通りの中央を走る、都電荒川線を跨(また)げる所まで、路を逆方面に向かう車の流れに乗せ、面影橋(おもかげばし)駅前の信号で漸(ようや)く、線路を跨(また)ぎ、車を高田馬場方面の流れに、乗せる事が出来た。 「流石に日曜日のこの時間じゃ車少ない っスね、それ程かからねぇで関越に乗れ そぅス」 「あぁ、とにかく事故と、サツだけには 気を付けろや、なぁ相棒」 伸夫に応えて、浅井は喉の渇きを覚え、路の先に視線を向ける。 「伸夫、コンビニ近くでちょっと車止め ろ、コーヒーと食い物に、タバコを仕入 れて来る。 お前は乗って待ってろ!」 浅井の言葉に伸夫は三車線有る路を、左にある歩道へ車を寄せて行き、コンビニの手前で軽トラックを止めた。    
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