240人が本棚に入れています
本棚に追加
「兄貴、行き先、組(うち)の産廃事業所
(産業廃棄物事業所)で良いんスよね?」
マンションの敷地を出た軽トラックは、右にウインカーを出し、坂道を下り始める。
「あぁ、新目白(通り)を真っ直ぐ行って、
関越に乗りゃあ後は花園で降りるまでは
1本道だ!
降りてからは俺がナビするからよ」
くわえたタバコに火をつけ、助手席で首の後ろを揉(も)んでいた、浅井が答える。
日曜日の夜も11時を過ぎた時刻の街は、早い眠りに就(つ)いた様に、静まり返っていた。
軽トラックは坂を下り終えると、ジグザグに入り組んだ細い道を進み、神田川に架(か)かる小さな橋を渡る。
新目白通りの中央を走る、都電荒川線を跨(また)げる所まで、路を逆方面に向かう車の流れに乗せ、面影橋(おもかげばし)駅前の信号で漸(ようや)く、線路を跨(また)ぎ、車を高田馬場方面の流れに、乗せる事が出来た。
「流石に日曜日のこの時間じゃ車少ない
っスね、それ程かからねぇで関越に乗れ
そぅス」
「あぁ、とにかく事故と、サツだけには
気を付けろや、なぁ相棒」
伸夫に応えて、浅井は喉の渇きを覚え、路の先に視線を向ける。
「伸夫、コンビニ近くでちょっと車止め
ろ、コーヒーと食い物に、タバコを仕入
れて来る。
お前は乗って待ってろ!」
浅井の言葉に伸夫は三車線有る路を、左にある歩道へ車を寄せて行き、コンビニの手前で軽トラックを止めた。
最初のコメントを投稿しよう!