第1章 顔の無い男

24/27
前へ
/270ページ
次へ
人間の体ってぇのはよ、死んで2時間く れえすっと、その死後硬直ってのが始ま る、それも頭のテッペンから徐々に下へ 向かってな、そして半日もすりゃあ、カ チコチになっちまう。 このベッピンさんは死んでから、俺達が ここへ来るまで、2時間と経っちゃいな かった。 俺達が作業に取り掛かってから、せいぜ い2時間って所だ、死後約4時間、まだ 全身に硬直は進んで無かった訳よ。 後2、3時間もしたら箱に収めんのもひ と苦労だったかもな、、、。 話を戻すが、死後硬直は死後半日で完成 し、30~40時間後に硬直は徐々に解 けて行き、90時間後、まぁ3、4日っ て所で、硬直は完全に解けるって訳よ、 まぁ気温によってこの時間は、変わって くんだがな。 サツ官なんかは検死の結果と死体の状態を、事件毎(ごと)に頭に叩き込んでって、死体を見ただけで死後どんくらいかを、覚えてくんだろうよ!場数って奴だ」 ■ ■ ■ ■ ■ 浅井がした死後硬直のレクチャーを、ハザードを点滅させた、軽トラックの運転席で、車の脇を通り過ぎて行く、他車のテールランプを眺めながら、伸夫は思い出していた。 『えっ!』 物思いに耽(ふけ)っていた伸夫の瞳に、回転する赤い光が近付いて来ていたのが、サイドミラーに反射して映し出されるまで、伸夫は気付かずにいた。 『ア、兄貴ぃ~、ヤバイっス』 軽トラックの前に回り込んで、停車したパトカーを、凝視(ぎょうし)した伸夫は心の中で叫んだ。    
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!

240人が本棚に入れています
本棚に追加