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2 発端
「美奈ちゃん、ココアでいいよね?」
キッチンからカウンター越しに、リビングのテレビの前で、絨毯に直接座り込み、DVDのケースを握りしめ、ソワソワしている美奈の小さな後ろ姿に、彩乃(あやの)は目を細め、微笑みながら声を掛けた。
「うん、ココアで良い、それより早く観
ようよぉー」
「直ぐだからねぇ」
美奈にそう応えるとカウンターの上に、自分と美奈用のマグカップを乗せて行く。
その時、カウンターの上に置いた彩乃の携帯が、小刻みに振動し始めた。
「うん!」
コンロに掛けた鍋の中の牛乳に、視線を向けながら、携帯に手を伸ばす。
ディスプレイの画面に表示された名を確かめ、彩乃は少し戸惑う。
鍋の中の牛乳が吹きこぼれないよう覗きながら、通話状態にした携帯を耳へ持って行った。
「はい、どうかなさったの!?」
潜めた声で訊ねる。
[急で悪いが、これから行く]
何時もの様に用件だけを伝えて来る男に、彩乃は相手に分からない様な、小さなため息をつく。
「どの位でいらっしゃいますの?」
[うん、
都合が悪いのかね?
もう少しで着いてしまうのだが]
「えっ、そう」
[どうした?]
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