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「いえ、小さなお友達が遊びに来ている
物ですから。
でも、大丈夫、
私の方からもご相談したい事が、有りま
したから、お待ちしていますわ」
「うん」
短い応えで男からの通話が切れる。
彩乃は携帯をオフにしてコンロを切ると、慌ててリビングに向かった。
「ゴメンねぇ~」
テレビの前に座る美奈の横に、滑り込む様に膝を着き、彩乃は済まなそうな眼差しで、美奈の小さな体に腕を回す。
「エッ、どうしたの?
お姉ちゃん!」
美奈の体を抱き寄せる、彩乃の急な態度に驚き、美奈は彩乃の顔を覗き込んだ。
「あのね、美奈ちゃんとの約束の方が先
だったって、お姉さん言えなくて」
しょげた顔をした彩乃を、見上げた美奈の瞳が、その瞬間、年齢より遥かに大人の光を宿す。
「アッ!急なお客さんが来るんだ!?
ねぇお姉ちゃん、このDVDって明日も
観られる?」
「エッ!ええ、勿論。
明日でも良い、
本当に?」
「うん、何時も遊んで貰ってるんだもん
私良い子だよ! じゃ約束だね」
突然の彩乃の申し出に、駄々をこねる事もせず、笑顔で頷く美奈を、彩乃は再(ふたた)び抱きしめた。
「うんうん、約束、
良いよねっ、約束って言葉。
何だか言葉が暖かい」
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