第1章 顔の無い男

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「いえ、小さなお友達が遊びに来ている 物ですから。 でも、大丈夫、 私の方からもご相談したい事が、有りま したから、お待ちしていますわ」 「うん」 短い応えで男からの通話が切れる。 彩乃は携帯をオフにしてコンロを切ると、慌ててリビングに向かった。 「ゴメンねぇ~」 テレビの前に座る美奈の横に、滑り込む様に膝を着き、彩乃は済まなそうな眼差しで、美奈の小さな体に腕を回す。 「エッ、どうしたの? お姉ちゃん!」 美奈の体を抱き寄せる、彩乃の急な態度に驚き、美奈は彩乃の顔を覗き込んだ。 「あのね、美奈ちゃんとの約束の方が先 だったって、お姉さん言えなくて」 しょげた顔をした彩乃を、見上げた美奈の瞳が、その瞬間、年齢より遥かに大人の光を宿す。 「アッ!急なお客さんが来るんだ!? ねぇお姉ちゃん、このDVDって明日も 観られる?」 「エッ!ええ、勿論。 明日でも良い、 本当に?」 「うん、何時も遊んで貰ってるんだもん 私良い子だよ!  じゃ約束だね」 突然の彩乃の申し出に、駄々をこねる事もせず、笑顔で頷く美奈を、彩乃は再(ふたた)び抱きしめた。 「うんうん、約束、 良いよねっ、約束って言葉。 何だか言葉が暖かい」  
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