第1章 顔の無い男

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「本当にゴメンね、1人で大丈夫?」 靴脱ぎで運動靴を履く美奈を見ていて、改めて1人で帰す事が心配になった、彩乃が声を掛けた。 「そんなに遅い時間じゃ無いよ、児童館 に遊びに行った時も、帰りは何時も今(こ ん)くらいの時間だもん」 靴を履き終え立ち上がって、彩乃に向き直った美奈が笑いながら応えた。 「そぉう?、うーん、でもやっぱり、 お客さんに部屋で待っていて貰って、 私が美奈ちゃんを」 「心配性っ!お母さんと一緒。 美奈何だって1人で出来るもん、 来年2年生なんだから!」 彩乃の言葉を遮(さえぎ)り、ちょっと頬を膨らませ美奈が反論する。 玄関の上がり框(かまち)に膝を着き、心配顔の彩乃が、美奈の言葉に首を竦(すく)めた。 その時、玄関のドアノブの回る微かな音と共に、ドアが外へと開かれる。 「不用心だな、カギは・・・」 室内に注意を促(うなが)しながら、ドアを開けた男が、玄関内の2人に気付き、言葉を呑み込んだ。 「アラッ、本当に直ぐでしたのね」 「う、うむ」 場違いな空間に登場してしまった、自身に戸惑い、男の返事は重い。   
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