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――昼休み。
俺は私立春風学園のレストラン『アミー』に来ていた。
洋風インテリな雰囲気が漂い、テーブルが見渡す限り並んでいて彼方に見える窓枠に沿ってカウンター席がある。
「そう落ち込むなって、望」
俺はサッカー部にでも所属していそうなうざったらしい奴。
固有名詞で言えば『桐山 翔(キリヤマ カケル)』に肩を叩かれた。
なんとも不愉快極まりない。
気晴らしにこいつの容姿を脳内で文字変換してやると、軽モヒカンが印象的で無駄に整った顔立ち。
そして、骨と筋肉と時々脂肪的な細マッチョな身体付きで、無駄毛が無いスラッとした二本足。
隣に韓流スターがいても何の違和感ない男だ。
無論、韓国スター等興味ない。断言しておく。
「……うるせ。俺は人生最大の失態を犯してしまったんだ」
リストラされたサラリーマンのように、ヤケ酒……ではなくセルフのアルカリイオン水をグッと胃に流し込む。
穴があったら入りたい……いや、いっそ八つ裂きにしてくれ。
「はぁ……なんで俺はこの世に産まれてきたのだろうか」
「ははは。望ちゃんにシリアスは似合わないZE!」
「……なんで俺の回りにはロクな奴がいないんだか」
「それを僕の前で言わないでもらえますかね!?!?」
「おいおい、そんな出目金みたいな目で怒鳴らないでくれよ。俺は傷心なんだ」
「そんなに目出てねぇーよ。きさまのせいで僕は……僕は…………」
「いいだろ、別に? お前、こう罵られることが好物なんだろ?」
翔に背を向ける。
そして、アミーのマスターが気まぐれで置くぬいぐるみを両手ではさむ。
今日はネズミの国の住人の黄色い犬だった。
「そう、見ての通りこいつはどーしようもないエム野郎ってわけだ。金髪美少女に鞭打ちされることが日課らしい。たく、どうしてこんな奴とつるむ事になったのか。世の中は不思議で溢れていることを自負せざるを得ないだろうか」
「あんた何口に出しているのですか!?!? 確かに金髪美少女に鞭で叩いて貰えるならしあわ……って、望ちゃんのバカーーー」
「ほらほら泣くな。気持ち悪いから」
「あんたストレートすぎますよ!?!?」
「そうか?」
自覚無いけどな。
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