恋心、そして出会い

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「えっ……まじかよ!」  黒髪ツインテールの美少女が、俺に背中を向けて落ちてくる。  くっっ……彼女が危ない。 「このまま落とすわけにはいかねぇーよ」  右足を階段から離して後退。  落ち着け……冷静になれ。  黒髪ツインテールの美少女が足を滑らせた場所は、踊り場からそんなに離れていない。  もし、背中から叩きつけられたら、脊髄損傷もありえるかもしれない。 「……ちっ」  なんだ? この吹っ切れた感じは。  胸に秘めた正義感が疾風の如く全神経を駆け巡り、まるでもう一人のぼ……いや、俺とチェンジした感覚だ。  さて、落下点に入った俺は衝撃を和らげるために腰を低くして、両腕を差し出す。 「うっ……」  見えたのは、眠り姫。  女子ってこんなにきめ細やかい肌で、こう胸を締め付けるような甘酸っぱい香りがするのか!?!? 「ぐはぁ……」  案の定、俺は落下の衝撃に耐え切れず、黒髪ツインテールの美少女を両腕で包みながら尻餅をつく。  くっ……胃酸が逆流したのか。  口の中にレモンのような酸っぱさが満ちる。 「……え? 痛くない。あたしは……」  黒髪ツインテールの美少女の目が、新世界に転送されたヒロインみたいにゆっくりと開く。 「た……くよ……いきなり……落ちて……くんなよ……な」  刹那。 「うっっ……」  脳細胞に雷を打ち込まれたような感覚が襲う。  偏頭痛。  最近、やけに多い。  何かの前兆? いや、そんなファンタジーありえないだろ……ラノベじゃあるまいし。
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