恋心、そして出会い

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恋心、そして出会い

――誰かが呼んでいる気がする。  そんな言葉が脳裏を貫いたのは、春と夏が入り交じるような日差しが眩しいゴールデンウィーク明け。  つまり、今日である。  どうしてこんな事を思ったのか、どうして今なのか。  訳分からない事ばかり思いつくが、物凄く胸の奥が締め付けているのは確かだ。 「はぁ……」  閑話休題。  こんな理屈のないことを考えていたら頭が痛くなる。  そんでこの俺、天城望(あまぎ のぞむ)は右手の親指、中指、小指をおわん風に立ててライトノベルをセットして左手でページをめくる。  うへへ……やっぱ恵美ちゃんは最高だぜ!!!!  ピンク髪×ロリ×巨乳。  最強の方程式のヒロインが登場する『ラブ×コイ☆』っと言うライトノベルにもううはうはですよ……はぁぁ……はぁ。  そして、チョークを粉チーズのように粉々にすることに生きがいを感じている『池原』が額……いや、背中に汗を垂らしながら黒板に文字を書いている姿に吐き気を感じながら恵美ちゃんと清純のイチャイチャシーンを目で追う。  たく、現代文のテストで赤点取ったらラグビー部に強制入部させる教師がこの世界に存在して良いのだろうか。 「貴様……授業中に何をしている」  そうそう、こんな変声期に怒り狂いすぎておかしくなってしまったような声。  生身の身体から溢れる汗臭ささが鼻腔を貫く。  現代文の教師が上半身裸で授業するとか、頭大丈夫ですか? 「いやー今日はいつにも増して綺麗なお顔だちだなぁーと思っていたもんで」 「貴様の目は頭のてっぺんに付いているのか?」 「じゃあ、そういうことにしといてください」 「ふっ、そうか。貴様がそう対抗して来るとは我ながら予想外であった。しかし、先生は近年稀にみる寛大な心の持ち主だ。よかったな天城」 「はいはい……そーですね」  一応補足しとくが、別に普段からこんな不良みたいな態度を取っているわけではない……ここ、重要。  
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