風の薫り

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そっと風が頬を撫でる。 牛の鳴き声に我に帰る。 「やべっ、午後の薬飲んでない💦」 日差しが少し痛い 「あぁ、もう夏近いんだなぁ」 もう何も匂わなくなった鼻にフッと木々の匂いを感じた。 もうすっかり忘れてると思ってた 〔薫り〕 「あの時から頭の中に残っててくれたんだ」 そう思うと、少しうれしくなる。 左耳も聞こえない。 左目もボヤけてる。 でも自分は生きている! 左耳に風の波を感じるし左目には色を感じる。 そう。今という時の流れを感じる事ができる。 コウ(主人公)は眠い目を擦りながら ほんの少しだけ痛みを我慢しながら ゆっくりと立ち上がった。 痛いのは慣れた。 慣れたなんてもちろんウソ。 そう自分に言い聞かせないと挫けそうになる。 それでも…… 今を生きている。 そう実感している。 さて、午後もがんばるか。 一歩一歩、歩き出す。 十年前もこんな風が吹いていたのかな? そう考えると…
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