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『暇な人間は沢山いるんだから、考える時間はありそうなものなのに』
【ミもフタも無く言えば「誰か」をアテにしてるのだろう、誰かが「やれ」、誰かが「やる」とな】
少女と姿無き者は、ひたすらに人を嘲る、大人びた姿をしているが、幼さを残す少女でもあるにも関わらず、既に人の世の汚さを知ってるかのように。
「はあ……下らない」
僅かに目を細めた少女は、呆れたように嘆息する。
【貴様もだ、いつまでも愚痴ってないで頭を切り替えろ、何を望んでいるのか明確にして、それをやれば良かろう、何もしなければ何も変わらないのは、貴様が良く知ってる筈だが?】
『うーん…相手になるような人間と、最近は全然出会わないから、どうも退屈でね、頭を使わなくても、あっさり「魂」を取れちゃうし…クスクス』
【ならば、相手になるような人間を、自分で誘ったらどうだ?】
『なる程…悪霊を狩ったりだけじゃ飽きてきたから「魂」を人から奪い始めたけど…そうね、噂が広まるくらいの事を起こせば…』
【噂を聞きつけた魔術師や霊能者が、ここへ来るだろうな】
『クスクス、面白くなりそうだわ、そんな相手が来たら、久しぶりにまともな「戦い」になるよね?』
少女は誰も居ない背後に振り向きながら、深紅の瞳を闇に輝かせて話す。
【………それは当然だろう、ま、好きにしろ】
『いいの?』
【構わんさ】
姿無き者が少女の語る物騒な話にも、何ら声色を変える事なく淡々と返事をする。
『クスクス…ありがとう』
【いちいちオレが許可する必要ないだろ?…だが気をつける事だな、油断をすれば、格下の魔術師にも負けるぞ?】
『そうね、私が知ってる魔術師の人も、本人の実力はともかく「魔術武器」は、かなり強い物…らしいし、気をつけないとね、さてと、ちょうど良い舞台がここに在るし、「仕掛け」を作るかな…クスクス』
少女は頷きながら答えた後、ゆっくりと歩き出した、今まで廃校の屋上を照らしていた月を遮るように、分厚い雲が流れてきて、そして僅かな光すら無い真の暗闇が包み込む中で、まるで足音を立てずに歩く彼女の深紅の瞳だけが、チラチラと炎のように輝き燃えていた。
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