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…………それから《一年後》……………………
『くそぉぉ!遅刻しちまう!』
早朝の住宅街の歩道を、大声を上げながら全力疾走する男子が居た。
『よりによって寝坊した日に、自転車がパンクしてるなんて…、どうせなら早めに「パンクしちゃってるよボク♪」とでも言えよ、あの自転車め!』
よほど焦っているのか、訳の分からない罵声を言いつつ、点滅して赤信号に変わる寸前の横断歩道を、全くためらいなく突っ切る。
男子が反対側の道路に足を踏み入れたと同時に信号は赤に変わり、次は道路の信号が青となって、停車していた車が動き出す。
『はぁ、はぁ、はぁ…ギリギリか……でもねぇぇ!』
ゼエゼエと息を切らしながらも、なんとか信号が変わる前に横断歩道を渡りきり、もう少しでバス停にたどり着くと、ホッとした時、流れ始めた車の中に学校の近くまで行く、バスがこちらに迫っていたのを見て、再び男子は叫び、ぎゅるんと体を半回転すると、再び全力疾走した。
…………………………………………………………
キーンコーン♪カーンコーン♪
『ちくしょ~!やっぱり間に合わなかったかぁぁっ!』
眼前に迫る母校の入り口、授業が開始する前のチャイムを聞きながら、もう同級生達の1人も見かけない歩道を、ひたすら走る。
『横島!早く来い!』
学校の門の所に居るのは体育の教師・氷山一郎、見かけは優しいのだが、怒るとなかなかに怖い先生なので、彼をバカにする生徒は殆ど居ない。
ちなみに「氷山」は間違っても「ひょうざん」では無く、「ひやま」と呼ばないとならない、間違えると落ち込むと言うガラスハートな一面があるからだ、しかし「なんで、あんなに読み間違えやすい文字を使うんだ~」と、男子…横島正は心の中で叫びながら、氷山先生が待つ学校の門を突っ切って、玄関まで走り抜けようとした。
『まて横島!減点チェックがまだだぞ!』
その声に密かに「くそ!勢いに圧倒されてスルーしてくれりゃ良かったのに」と、心の中で呟いた。
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