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横島正は「あはは」と誤魔化すように笑いながら、小走りで氷山先生の所まで戻った。
『おはようございます氷山先生』
『おはよう、横島…お前、今逃げようとしたな?』
『ち…違いますって、ただ全力疾走でしたから、勢いがありすぎて止められずに、玄関まで行く所なだけだったすよ』
『つまり逃げようとしていた訳だろうが…全く、お前には厳しく二点減点とする』
『いいいっ!先生それはご勘弁を~』
横島は「のぉぉぉ」と頭を抱えて仰け反ると言う、大げさなリアクションを取る。
『ダメだ、逃げようとした罰だからな、ちなみに後一点減点で放課後の草むしりが待ってるぞ』
『いやよぉぉぉ~!』
横島は両手を頬に当てつつ、クネクネしながら叫ぶ。
『止めんか気持ち悪い!…とにかくだ、さっさと学校に入れ、もう授業が始まってるぞ』
『はい~』
横島は海の中で揺れている、海藻のように脱力した返事を返すと、氷山先生に背を向けてトボトボと歩きながら玄関に入って行った。
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玄関に入り、下駄箱から上履きを取り出して外靴と取り替え、足元にある外靴をつかんで自分の下駄箱に入れる。
『さて、今日もやるか』
イマイチやる気は感じられない口調で言いつつ、上履きに足を通し、ギシギシと微かな音を立てる板の上を歩いて、玄関から学校内に入る。
入り口を入ってすぐ左手に階段があり、そこを上がればすぐに横島の教室がある、一年の頃は全く反対側に教室があった為、ちょっと面倒くさいと思っていたから、今の教室は非常に楽な距離だと言える。
横島は授業が始まって誰も居なくなった静かな階段を、一歩一歩踏みしめるようにして二階へと上がってゆく。
そして二階に上がると、一階の玄関の所と同様、小さなホールになって開けている場所に出る、そして横島が居る二年生の教室は、玄関の真上に位置するところに、2年のA組からE組までの五つのクラスの教室が並んでいる。
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