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『…じゃあ何の勉強に向いてんのさ』
『そんなもん漫画やアニメに決まってるだろ、一度読んだだけで頭に入るからな』
『アニメの知識かよ!!』
ジャブを打ち込んだ女子・森井夏子と反対側に座る男子の益田満がツッコむ。
『おう!アニメや漫画は人間の創造力を用いて創られた、非常に優れたモノだ、その内容は実に魅力的なものが溢れている、例えば…見ろ益田、この女を』
顔は益田の方に向けたまま、ビシッと森井夏子へと指差す。
『アタシが何よ?』
その問いには答えず、益田へと話を続ける横島。
『森井とアニメキャラクターの美しさはスバ抜けて違うだろうが!石とダイヤモンドくらいに違……ぐばぉぉっ!?』
そこまで言った瞬間、横島は奇妙な断末魔を上げた。
『アンタ…そこまで言ってくれるとはいい度胸してるじゃない?…覚悟はしてんだよね?』
横島の左頬にストレートを打ち込んだ森井は、手を引いた後にボキボキと指を鳴らながら、横島に殺気を込めた視線で睨みつけた。
『おのれぇぇ…一度ならず二度までも、俺にパンチを打ち込むたぁ…さすがにオレ様のライバルだぜ』
口元をさすりながら、何かのスポーツ漫画のような台詞を吐きつつ、スックと立ち上がる。
横島はストレートを不意打ちで食らったにも関わらず、全然堪えていない様子であった、それもその筈、森井夏子はボクシングをかじった経験があるが、横島も空手をかじった経験があったからだ、つまり…殴られ慣れているので多少のパンチならば平気なのだ。
『なによアニメ野郎、またやるっての?』
『いいねぇ、お前との勝負は二年生に進級した頃以来だ、ここで決着をつけるか?』
『はあ?一週間前の勝負を忘れた?…アタシにボロ負けした記憶は無くなってるワケ?』
森井は容姿を漫画のキャラクターと比較されて怒っているが、一方…横島はお構い無しで、アニメや漫画のノリで応じる。
森井は椅子を蹴倒しながら立ちがあると、2人は向かい合って、それぞれが習得した格闘技の構えを取りながら、ジリジリと間合いを詰め始めた。
『やめろって!!』
益田はとっさに声を上げて、2人を止めようとする。
ボカ!ザザッ…ビシッ!ガッ!………
『だから止め…ぶはぁ!』
しかし次の瞬間、横島が攻撃を避けた拍子に、顔の横を通り過ぎた森井の鋭い左ストレートが、横島の後ろに立っていた益田の顎を打ち抜いてしまい、床にパタリと倒れたのであった…
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