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「掃除おわりましたぁ~」
掃除を終え、執務室へ帰るといつもどおり上司がいた。
白髪混じりの初老のである彼はこちらに気付くと、にっこりと微笑んだ。
「おかえり」
この人の笑顔は本当に落ち着く。
人望の厚い彼を尊敬する者は少なくない。
いや、むしろほとんどの人間がこの人を見れば彼を讃えるであろう。
そこまで彼は完璧だった。
青年は彼の定位置である事務机の横を通りすぎ、青年の定位置である革張りのソファに
「どっこいしょっと…」
と、親父臭い声をあげ、自分も腰かけた。すると、ポケットの中の物の事を思い出した。
「あの、コレ今日の掃除の時に見つけたんですけど…」
そう言い、彼に例の布を見せると彼は普段の彼らしからぬ表情をみせた。
「見せてもらえるかな?」
少し震えた声の主にそれを渡すと、まるで壊れ物に触れるかのようにそっと手にした。
「……っ!」
受け取った彼はそれを膝の上に広げると、やはり…と言った顔つきになった。
そして彼は膝の上の布を昔懐かしむような優しい目をしてそっとなでた。
「それは?」
不思議に思いたずねると、彼はなでていた手を止め口をひらいた。
「これはね、
ヒーローの証さ。」
そう言った彼はいつもよりきらきらした目で笑っていた。
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