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深い深い山の中。
人っこ一人居ない山の中。
そんな山の中に“それ”は居た。
「テメェら俺に朝のあいさぁあつ!!」
「「「「「キー!!」」」」」
「声が小せぇ!!おらもう一辺、あいさぁあつ!!」
「「「「「キー!!」」」」」
「よぉし! んじゃ今朝の見回り行くぜ!全員俺に続けぇ!!」
「「「「「キー!!」」」」
掛け声と共に、“それ”は猿のように木から木へと渡り移った。
無数の猿を引き連れ、山の中を思うがままに移動する。
その姿は文字通り、お山の大将、いや、お猿の大将だ。
「ん?」
ふと“それ”は動きを止め、スンスンと鼻を動かした。
そしてニヤリと口角を上げ、後方の猿たちに向かって言い放った。
「おいテメェら人間の匂いがするぞ!しかも若い女の匂いだ!こりゃ久し振りに楽しめそうだぜ!」
「「「「「ウキー!!」」」」」
後方の猿たちが一瞬にして興奮し始める。
“それ”も舌舐めずりをし、気持ちの昂ぶりを顕にした。
「久し振りの若い女だ……たぁっぷり可愛がってやるとすっか…」
その頃、山の中を一人の少女がセーラー服姿で歩いていた。
片手に愛用の赤い槍を携え、岩だらけの山をスカートで歩き回る。
白い肌や下着が丸見えになろうがお構い無しだ。
「それにしても歩きにくい道ですね。さっきから岩ばっかり…」
そう呟きながら、少女――真田幸村は顔を顰める。
普段は人形のように無表情な彼女にとって、それは非常に珍しいことであった。
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