episode1 お猿の大将

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深い深い山の中。 人っこ一人居ない山の中。 そんな山の中に“それ”は居た。 「テメェら俺に朝のあいさぁあつ!!」 「「「「「キー!!」」」」」 「声が小せぇ!!おらもう一辺、あいさぁあつ!!」 「「「「「キー!!」」」」」 「よぉし! んじゃ今朝の見回り行くぜ!全員俺に続けぇ!!」 「「「「「キー!!」」」」 掛け声と共に、“それ”は猿のように木から木へと渡り移った。 無数の猿を引き連れ、山の中を思うがままに移動する。 その姿は文字通り、お山の大将、いや、お猿の大将だ。 「ん?」 ふと“それ”は動きを止め、スンスンと鼻を動かした。 そしてニヤリと口角を上げ、後方の猿たちに向かって言い放った。 「おいテメェら人間の匂いがするぞ!しかも若い女の匂いだ!こりゃ久し振りに楽しめそうだぜ!」 「「「「「ウキー!!」」」」」 後方の猿たちが一瞬にして興奮し始める。 “それ”も舌舐めずりをし、気持ちの昂ぶりを顕にした。 「久し振りの若い女だ……たぁっぷり可愛がってやるとすっか…」 その頃、山の中を一人の少女がセーラー服姿で歩いていた。 片手に愛用の赤い槍を携え、岩だらけの山をスカートで歩き回る。 白い肌や下着が丸見えになろうがお構い無しだ。 「それにしても歩きにくい道ですね。さっきから岩ばっかり…」 そう呟きながら、少女――真田幸村は顔を顰める。 普段は人形のように無表情な彼女にとって、それは非常に珍しいことであった。
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