episode1 お猿の大将

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「はぁあ~……人間と話すのってこんなに大変なことだったか? スッゲー疲労感…」 “全裸の男”は幸村の上から退き、項垂れながら地面に腰を下ろした。 「強姦しないんですか?」 「萎えたわドアホ。それとも犯ってほしいのか?」 「遠慮させていただきます」 「なら聞くな」 それを最後に、幸村と“全裸の男”の間には沈黙が流れた。 「……」 「……」 「……あ、そういえば…」 突如幸村が口を開き、“全裸の男を見据えた。 「お聞きしたいんですが、何で全裸なんです? 寒くないんですか?」 「アァ?服が泥だらけで着たくても着れねぇんだよ。あと見ての通りめっちゃ寒いわ!! へ…、へーっくし!!」 腕を擦り、体を温めようとする“男”。 それを見て何を思ったのか、不意に幸村が“男”に抱きついた。 「何っ!!?」 突然のことに“男”は顔を赤くして慌てふためいた。 「お、おいテメェ何して…」 「寒そうだったんで、人肌と温めようと…」 「っ!!?」 “男”は幸村の言動が全く理解出来なかった。 この女は何故自分に触れてくるのだろう。 自分はさっきまで、この女を犯そうしていたのに…。 本当に、この女には貞操の危機と云うものがないのであろうか。 “男”の脳内を、そればかりがぐるぐると廻った。 「…変な女だな、テメェ」 「そうですか? それより少しは温っまりましたか?」 「あ? あ、あぁ…。一応…礼言うわ…あんがと、な?」 頬を掻きながら照れ臭そうにそう述べる“男”に、幸村は軽く会釈して返した。 「でも、何故服が泥だらけになったんです?」 「あぁ。子猿が泥沼に落ちそうになってな…」 「それで助けに行ったら貴方まで落ちたと?」 「そんなとこだ。あ、でも子猿はちゃんと無事だったぞ!!」 “男”が得意気にそう言うと、幸村はじっと相手を見つめた。
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