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「はぁあ~……人間と話すのってこんなに大変なことだったか? スッゲー疲労感…」
“全裸の男”は幸村の上から退き、項垂れながら地面に腰を下ろした。
「強姦しないんですか?」
「萎えたわドアホ。それとも犯ってほしいのか?」
「遠慮させていただきます」
「なら聞くな」
それを最後に、幸村と“全裸の男”の間には沈黙が流れた。
「……」
「……」
「……あ、そういえば…」
突如幸村が口を開き、“全裸の男を見据えた。
「お聞きしたいんですが、何で全裸なんです? 寒くないんですか?」
「アァ?服が泥だらけで着たくても着れねぇんだよ。あと見ての通りめっちゃ寒いわ!! へ…、へーっくし!!」
腕を擦り、体を温めようとする“男”。
それを見て何を思ったのか、不意に幸村が“男”に抱きついた。
「何っ!!?」
突然のことに“男”は顔を赤くして慌てふためいた。
「お、おいテメェ何して…」
「寒そうだったんで、人肌と温めようと…」
「っ!!?」
“男”は幸村の言動が全く理解出来なかった。
この女は何故自分に触れてくるのだろう。
自分はさっきまで、この女を犯そうしていたのに…。
本当に、この女には貞操の危機と云うものがないのであろうか。
“男”の脳内を、そればかりがぐるぐると廻った。
「…変な女だな、テメェ」
「そうですか? それより少しは温っまりましたか?」
「あ? あ、あぁ…。一応…礼言うわ…あんがと、な?」
頬を掻きながら照れ臭そうにそう述べる“男”に、幸村は軽く会釈して返した。
「でも、何故服が泥だらけになったんです?」
「あぁ。子猿が泥沼に落ちそうになってな…」
「それで助けに行ったら貴方まで落ちたと?」
「そんなとこだ。あ、でも子猿はちゃんと無事だったぞ!!」
“男”が得意気にそう言うと、幸村はじっと相手を見つめた。
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