26人が本棚に入れています
本棚に追加
「…正直、驚きました」
「あ?何に?」
「貴方にです。こんなに優しい方だとは思ってもみなかったんで」
「優しい!?俺がぁあ!!?」
“男”の顔がみるみる赤くなっていった。
もう耳まで真っ赤だ。
「顔、赤いですよ」
「ううう、うるせぇええぇえ!!!」
「ひょっとして照れてます? 見掛けに依らず初なんですね」
「黙れぇえええ!! テメェマジ犯すぞぉおおぉお!!?」
興奮する“男”に対し、幸村はやはり無表情であった。
「ハァハァ……つーかテメェ、何でさっきから無表情なんだよ!?まだその顔と目ぇ見開いた顔しか見てねぇぞ!!?」
「そう言われましても、生まれつきと云うか何と云うか…」
「だいたい勿体ねぇだろうが!! せっかく可愛い顔してんだから笑ったりすりゃいいのに!!」
「……」
幸村は、何も言い返してこなかった。
“男”は何かまずい事でも言ってしまったのだろうかと、内心慌てた。
「っ、アァ~…もしかして、俺何かまずい事言っ………!!?」
今度は“男”が目を見開く番だった。
“男”が幸村の顔色を窺うように顔を覗き込むと、彼女は困ったような表情をしながら顔を真っ赤にさせていたのだ。
「え、あ………どった?」
思わず吃りながら幸村に尋ねる“男”。
それに対し幸村はおもむろに口を開いて答えた。
「幼少、の頃から……『お人形さんみたい』とか『綺麗な子』とは言われたことがあるんですが……『可愛い』は…生まれて初めて言われました…」
そう言い終わると、幸村は“男”から離れ、少し距離を取った。
彼女の顔はまだ赤く、ようやく年頃の少女らしい態度であるなと、“男”は純粋にそう思った。
最初のコメントを投稿しよう!