episode1 お猿の大将

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「…正直、驚きました」 「あ?何に?」 「貴方にです。こんなに優しい方だとは思ってもみなかったんで」 「優しい!?俺がぁあ!!?」 “男”の顔がみるみる赤くなっていった。 もう耳まで真っ赤だ。 「顔、赤いですよ」 「ううう、うるせぇええぇえ!!!」 「ひょっとして照れてます? 見掛けに依らず初なんですね」 「黙れぇえええ!! テメェマジ犯すぞぉおおぉお!!?」 興奮する“男”に対し、幸村はやはり無表情であった。 「ハァハァ……つーかテメェ、何でさっきから無表情なんだよ!?まだその顔と目ぇ見開いた顔しか見てねぇぞ!!?」 「そう言われましても、生まれつきと云うか何と云うか…」 「だいたい勿体ねぇだろうが!! せっかく可愛い顔してんだから笑ったりすりゃいいのに!!」 「……」 幸村は、何も言い返してこなかった。 “男”は何かまずい事でも言ってしまったのだろうかと、内心慌てた。 「っ、アァ~…もしかして、俺何かまずい事言っ………!!?」 今度は“男”が目を見開く番だった。 “男”が幸村の顔色を窺うように顔を覗き込むと、彼女は困ったような表情をしながら顔を真っ赤にさせていたのだ。 「え、あ………どった?」 思わず吃りながら幸村に尋ねる“男”。 それに対し幸村はおもむろに口を開いて答えた。 「幼少、の頃から……『お人形さんみたい』とか『綺麗な子』とは言われたことがあるんですが……『可愛い』は…生まれて初めて言われました…」 そう言い終わると、幸村は“男”から離れ、少し距離を取った。 彼女の顔はまだ赤く、ようやく年頃の少女らしい態度であるなと、“男”は純粋にそう思った。
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