一章 女木直人(メギナオト)

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「それはなあ……」  それこそ大家さんの言う通り、不謹慎ではないか。 「お願いです! 私……ゾ、ゾンビになってからまだ誰ともきちんと話したことなくて……それに、先輩にゾンビについていろいろ聞きたいんです!」 「先輩?」  自分のことなんだろうがそいつは間違っている。俺はまだピュアピュアな高校一年生だぜ。  俺の制服を見て同じ高校の先輩って思ったんだろうけど、俺ってばそんなに老けてるのか。 「あ、はい。私一年生なんで、あなたは先輩なんじゃないかと」 「いや俺も一年生だからね。老け顔って自覚はなかったんだけど、俺って老け顔なんだ……」 「い、いえ! 違います! 大人びていたので先輩なんじゃないかなあ、と。決して老け顔なんかじゃありません!」  慌てて小さな手を左右へ振りまくる少女。手をぎゅっとしてもよいだろうか。 「気にしてないよ。でもなあ、男女が泊まるのはマズイだろ。……あれ、この発言が気持ち悪い?」  事態は深刻だ。こんなかわええ女の子にキモい言われたら立ち直れねえ! 「い、いえ。ですけど私たちゾンビですよ?」  ……ふむ。理由はわからんが、かなり説得力があるなその言葉。俺は頷いて、床にペタンと座っているヤワちゃんを見つめた。 「よし、ご飯作ってくれ」 「わぁ……ありがとうございます!」  ぴょんぴょんとヤワちゃんは台所へ向かう。まあ布団は二つあるしいっか。あ、一つは俺の分でもう一つは健二の分。あいつよく泊まりにくるから布団を俺の家に置いているのだ。
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