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「ねえ、あのさあ。どうなのそれ? パンティ代えたいから一度家に帰りたいです。なので付き合ってくださいって……それは女の子としてどうなのよ?」
「そ、そんなこと言ってません! 下着が昨日のままじゃ嫌だから着替えたいんです!」
「一緒じゃん」
時計を見る。時間的には余裕あるんだが……。なんかさ、俺の脳内の萌えっ子はそんなこと言わないんだよね。だから残念というかなんて言うか。
「昨日、一緒に登下校してくれるって言ったじゃないですか!」
ヤワちゃんは制服姿でドアの前に立ちふさがっている。俺を閉じ込める気らしい。
「登下校はね? 言ったよそれは言った。でもさあ、パンティ取りに行くのを手伝うのはなあ……」
俺が渋っていると、
「も、もういいです。あなたになんか頼みません! 私は自分の身は自分で守りますから! 登下校も結構です!」
くりくりした瞳を見開かせて、ヤワちゃんはそのまま出ていく。なんか実家に帰らせていただきます、みたいなノリだったな……。
「っと、んじゃ俺も仕事に行きますか」
のんびりと鼻歌でも歌いたくなるような気持ちで靴紐を結ぶ。よし完璧。
ヤワちゃんによって開かれたドアを閉めると、
「い、いひゃい」
目を回しながら鼻を赤くさせた大家さんがいた。なにしてんだこの人。
「なにしてるんですか?」
「え、あ……親戚の子どうしてるかなって扉の前に立ったら突然衝撃がきて……」
おそらくヤワちゃんのせいだな。
「ああ、あいつならパンツ取りに家に帰りましたよ」
「パ、パンツ!?」
鼻を押さえたまま大家さんが驚く。世界の七不思議に直面したみたいな顔だ。
「すいません、それじゃ俺学校があるんで「ちょっと待ちなさい直人くん」はい」
突然大家さんに腕を捕まれたのだ。音で咄嗟に判断したけど、聞こえてなかったら普通に大家さんを引っ張っていくところだったぞ。ゾンビはこれだから困る。
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