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じっとり、という擬音がふさわしい夏のある日。
私は汗だくになりながら、自分の母校である若葉小学校へと向かっていた。
街路樹に止まったセミの鳴き声が耳に響く。暑さが増長されていく気がして顔をしかめた。
日焼けするのが嫌で、長袖のパーカーを羽織ってきてしまった自分が恨めしい。
せっかくの夏休みだというのに、なぜこんな思いをしなくてはならないのか。
それは3日前のことだった。
「は!?なんで!?」
思わず大きな声を出してしまった私に、母はニッコリ笑った。
「だって、どうせダラダラする気だったんでしょ? ちょうどいいじゃない」
「よくない! なんで私が!?」
「一番ヒマなのが美咲だからよ」
ぐっ、と言葉を失う。真っ当な意見だからだ。
それでも反抗をやめる気にはなれない。
この攻防に、私の夏休みがかかっているのだ。
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