433人が本棚に入れています
本棚に追加
もう痛覚も駄目になったか
痛みが抜けていく感じがする
俺の周りにはティーカップの散乱した割れた破片、体内から出た血
「はぁ、はぁ…っ…はぁ…」
女は髪を乱しながら肩で大きく息をしていた女の拳には俺の血がこびりついている
「もういいわ、拘束はといておくから私は先に帰る、帰りたい時に帰りなさいっさようなら」
ギロリと俺を睨みつけ髪を整えてから俺の拘束を解き帰っていってしまった
起き上がろうとすればあばらの部分に激痛が走った何回も殴られてあばらが2、3本折れてしまっただろうか
口内の血の味が気持ち悪い
今はとても眠い気分だ、あぁ、早く帰ろう
「今日は厄日かよっ…くそッ…」
何とか立ち上がり部屋の隅に立てかけてあった長い鏡を見れば
ボロボロの自分の姿
あの女、わざと見えない場所ばかりに痣やらつけやがった
「性格わり…」
一度笑ってみたあまりにも自分が惨めだったからだ
それから外へ出た大分時間がたっていたのか公園の時計を見れば今は深夜の3時
家の中へ物音を立てないように入っていき押し入れを見れば心地良さそうに寝ている神楽がいた
「やっと帰ってきたな」
後ろから聞こえたのはきっと幻聴
心臓が凄い勢いでなり始めたのでこれは死ぬんだろうか、と思った
真っ暗な部屋の中に2つの影
「不法侵入か?警察呼ぶぞー」
「俺が警察だよ」
「そうだったな…」
あえて何故ここにいるのかは問わないでおこうか、そして奴が帰るのを待とう
立っているのさえ辛いというのに…
喋ることはこれほどまでに体力がいるものだったか?
「お前、怪我してるのか?」
「はぁ?してねぇよ」
「……電気つけるぞ」
「…やめろ」
パチン
2、3度点滅したあとに部屋に色がともった
「おい、やっぱり怪我してんだろ」
「不法侵入のあとは勝手な推測かよ、怪我してねぇって」
「じゃあこっち向けよ」
「早く帰れお前の奥さん待ってんだろ」
次の瞬間肩をつかまれ思い切りソファーに仰向けに押し倒された
「っ…何が怪我してないだッ!ひでぇ怪我じゃねぇかっ!どうして嘘ついたッ!」
何故こいつはそこまで焦るんだ
何故こいつは泣きそうになるんだ
泣きたいのはこちらだ好きなやつにふられその妻に暴力をふるわれ
なんでお前が辛そうにするんだ
俺は土方に笑ってやった
→
最初のコメントを投稿しよう!