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風が吹き抜けた、と思った時にはすでに、何もかもが消えていたのだ。
一瞬前まで異様な空気が支配していた室内は、いつもの少し寂れた、エル家の勉強部屋に戻っていた。
薄く開いた窓の外から、庭の花の香りがとどけられる。
先に我に返ったのは、ディエ・ディークだった。
椅子から転げ落ち、床に倒れているフィン・フィールを揺り動かす。
必死なそのさまを見て、教授も緊張の呪縛から解放された。
教授は、部屋の壁ぎわにある長椅子にフィン・フィールを横たえた。
彼が正気に返るのには、幾らも時間はかからなかった。
双子の片割れが目を覚ました時、ディエ・ディークは心の底からほっとした。
しかし、事件はまだまだこれからだったのだ。
屋敷が先ほどから騒がしい。
「何かあったのかな」
「さぁ……」
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