軌跡の輝き

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教授は、廊下に続く扉に視線を向けて、黙っていた。 双子が不安な気持ちになってきた頃、誰かが、この部屋に向かってやってくる、大きな足音が聞こえてきた。 「父上だ」 「どうして……」 ささやき交わす双子と、教授が見守る中、扉が乱暴に開かれる。 そこには、三十代の目のきつい、黒髪の男が立っていた。 現エル家当主、エル=ディファ・ロースその人だ。 「お久しぶりです、ディファ・ロース」 教授が先に挨拶をした。 それをにらみつけながら、ディエ・ディークたちの父親は口を開いた。 「アッサ・シーラ。何をやったかは訊かない。今すぐここから去れ。二度と、くるな」 不機嫌に言い放った言葉に反応したのは、幼い子供たちだった。 「そんな!」 「父上、どうして!?」 「黙れ!」 一喝されて、双子はひっと息を呑む。
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