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ディエ・ディークは、兄の部屋にも、いれてもらえなかった。
暇な時間にたまりかねると、こっそりディリ・ファーラの書斎にある本を借りてきて、庭の木陰でそれを眺めていた。
読む、とは言えない。
本はどれも難しくて、読めない文字や単語のほうが多い。
その日も、ディエ・ディークは庭で、兄の蔵書を眺めていた。
「難しい本だね。まさかわかるのかい?」
知らない声が聞こえて、ディエ・ディークは顔をあげた。
金色の髪の男がいた。
「わからない。けど、兄上のお好きな本だから、すこし見てただけ」
ディエ・ディークは硬い声で答えた。
「あぁ、よかった。その歳でその本の内容を、ひとりで読み解かれては、私の立つ瀬がない」
ふわり、と笑ったその顔が、兄の雰囲気と近くて、ディエ・ディークは警戒を少しゆるめた。
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