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「だれ?」
「魔法の教授」
「!?」
「できたら君の教授になりたくて、お父上に会いにきたんだ。でも今は、お留守だというからね。待たせてもらおうかと思って」
「むりだ。いまは兄上のおくすりが高いから、教授はたのめないって姉上が……」
言いかけて、はっと口をつぐむ。
自分の家の台所事情を、するっと話してしまった。
どこの誰かわからない者に。
男はくすくすと笑い、ディエ・ディークの側にかがみ込んだ。
「だいじょうぶ。私はお金を取らないから」
「え?」
きょとんと見あげる、ディエ・ディークの手許に視線を落とし、男はつぶやいた。
「この本のほうが、よっぽど高いけどね……」
その男の耳に飾りがあるのに気がついて、ディエ・ディークは、珍しいな、と思った。
「この本は、兄上がご自分のおきゅうりょうで、こっそり買ったんだ」
「こっそり……なるほど。おや、これは時の翁の本だね」
「なに?」
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