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「うん。君が、自分はディエ・ディークというひとりの人間だ、と自覚するまでにも、時の流れが必要だ。――わかるかい、赤ん坊の時から時間が進まなければ、自分が誰かわからないままだよ」
ディエ・ディークはそれを想像してみたが、うまくいかなかった。
「そして時間は自分の中だけではなく、世界中に影響がある。君の家族が君を見て、君の名前を頭に浮かべて口にするまで――それは一瞬だけど、時間がかかる。一瞬、というのも時間の単位だ」
ディエ・ディークは必死についていこうと、理解しようと考える。
「朝がきて、お昼になって、夜になるのは、ぜんぶ時間がながれているから?」
「そうだよ。……うん。難しかったね。ディエ・ディークは今いくつだい」
「六歳」
「そうか。でもきっとすぐに理解できる。時、というものが存在しないと、朝も昼も夜もこないのは、理解できたろう?」
「……うん」
ディエ・ディークは、ぎこちなく、うなずいた。
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