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「トキノオキナ……」
「そう。時の流れは、彼が護ってくれるから。止まりも、逆巻きもしない」
「サカマク?」
うっかり疑問の形で声にして、ディエ・ディークはあわてた。
また怖い話になる、と理解した。
きっとこの教授は、そういう人間だ。
男はにっこりと笑った。
もう意地悪な顔にしか見えなくて、ディエ・ディークはたじろいだ。
「……いっそ、あなたの時が止まればいい」
不意に聞こえた言葉に、その場の空気が、ひやりと冷えた。
父の声だった。
金の髪の教授は、すっと表情を消す。
その変化を、ディエ・ディークは正面から見ていた。
意地悪だけれど、いたずらを企むような笑みが、冷たい無表情になり、ディエ・ディークはそれまでと異なる怖さを感じ取った。
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