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手には布と手桶、飲み水らしい水差しを持っていた。
「――水をくれ」
口を開くと、その声が恐ろしくしゃがれていて、自分で驚いた。
「あぁ、三日も眠っていたのですから、無理もないですよ。はい、気をつけて」
水差しから小さな杯に水をわけて、ディク・リークはそっとディエ・ディークの口へ運ぶ。
首の下に手をいれて、口に含みやすいように助ける。
ディエ・ディークは、体にまったく力がはいらないことにも、愕然とした。
「まだ混乱していますか?」
ディエ・ディークの瞳をのぞき込んで、ディク・リークは何かを読み取ったらしかった。
「ディは私を置き去りにして、ひとりでさっさと旅立ってしまい、私は半日も休まず走ることになりました。やっと追いついたら、刺客に襲われているし、刺客の放った短剣を受けるし」
思い出した。
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