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落ち込みから立ちなおったディク・リークが、顔をあげて、魔法の教授然とした表情になり、説明を始める。
「ディ。聖霊は精霊より強い力を持っています。この地に存在する、すべての精霊たちの頂点にあるのが、聖霊。時の翁は、その聖霊です」
ディク・リークが手桶の水から布をしぼり、ディエ・ディークの額にあてる。
ひんやりしたその感触の、なんと気持ちいいことか。
熱があるのだ、とこの時やっと自覚した。
「彼ら聖霊は普通、聖堂から外へでることは、ありません」
「善し悪しは別にして、影響がありすぎて、混乱が生ずる。おとなしくしているに限る」
時の翁も言葉を差し込む。
「彼らは時に、人の身に刻印を与えます。見えない印のようなもので、契約書のような役割を果たします」
「絆と言ってくれないかな、法王」
翁の声に、ディク・リークは顔をしかめた。
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