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「麻由…ごめんね?あたしいつも麻由に愚痴言ってるよね」
すまなさそうに謝る南未に少し驚いたから、あたしは語気を強めた。
「愚痴なんかじゃないじゃん。あたしに気ィ使う事ないよ?あたしは南未のそうゆう話聞くだけで嬉しいんだもん。いつでも言いなね?」
「ホントー?麻由優し過ぎ~」
うわーんとうるうると瞳を潤ませて南未が抱きついてくる。
可愛らしいそんな行動に、あたしは南未の頭をポンポンと撫でた。するとふと南未が顔を上げて言った。
「麻由はさあ…」
「ん?」
「好きな人とかいないの?」
「…えっ?」
「麻由っていつも人の話ばっかりで、自分の事あんまり話さないじゃん?あたしは毎回愚痴聞いてもらってるのに、昔から麻由の相談に乗ったことないなあって思って」
子犬のような真っ直ぐな瞳で南未はあたしを見つめる。
南未はあたしを心配しているのだ。自分ばかりが甘えているのではと申し訳ないと思っているんだろう。
バカだなあ…南未は。
「手のかかる妹には相談出来ません」
お姉さんぶって上から目線でそう言うと
「えーっ!?何それー、あたし妹なの?同級生なのにー」
一瞬沈黙して数秒目を合わせ、同時にお互い吹き出して盛大に笑った。
有難う、南未…
うん。
好きな人なら
いるよ?
でも
南未に話したら、南未の中でもその恋が動き出しちゃうから
南未も余計辛くなるから
今はまだ秘密にしてていい?
あたしも先生に恋してるの。
ハッシーではないけれど
その人もこの学校の教師。
野宮創悟。
それが彼の名前。
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