prologue

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そして 「明日は~、ちゃんと呼べよ~?俺はハッシーじゃねーからな」 いつものように気だるそうな彼の声。 心臓が ドクンと脈打った。 でもそんな自分の変化にわざと気づかぬふりをして百点満点の笑顔であたしは言った。 「わか~ってるよ。沢橋セ~ンセ」 「おう。じゃーな。気をつけて帰れよー」 はーいと自転車に乗りながら振り返らず手だけ振る。 振り返ったら泣いてしまいそうだから。 いつもはアロハシャツ着て授業でもバカなことばっか言うくせに、変なとこで律儀な男。 沢橋瑛太。 職業 高校教師。 彼はあたしの好きな人。 叶うから恋するんじゃなく 叶わなくたって 恋をしてしまう。 だけど あたし 間違ったなんて思ってないよ? 叶わなくても 昨日も今日もあなたに恋をする。 早くまた あなたに会いたい。 だから涙よ 乾いてしまえ。 夜の空気は 夏の匂いがした。
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