242人が本棚に入れています
本棚に追加
6月。
衣替えをした教室は夏服の白で溢れ返っている。
梅雨独特の湿気は今日も続いており、午前中はなんとかもった天気も午後からは怪しい空模様だ。
とは言え、あたしはこの夏服が好きだ。
シンプルなセーラー服ではあるものの、冬服とは違い白地の生地に藍色に近い黒いセーラーはなんとも可愛らしく思える。
この制服が着たいが為にワンランク上のこの高校に入ったと言っても過言ではない。
昼休みの教室では、クラスメートたちが思い思いに過ごしている。読書する者、携帯に熱中する者、お喋りに夢中になる者、さまざまだ。
そして、高野麻由。
これがあたしの名前だ。
世間で言うところの女子高生。ちなみに高校二年生だ。
あたしはそんなみんなの様子を眺めるのが嫌いではない。
ましてや授業中にぼんやり空を眺めるのも、グラウンドに散らばり体育の授業をする後輩達を見るのも嫌いではない。
何かを見つめている時、幸せを感じる人間らしいのだ。
窓際前から三番目のあたしの席は、蒸し暑い梅雨時期も風通しが良く、意外に快適だ。
またいつものようにぼんやりとグラウンドを眺めると、
「麻由、傘持ってきた?」
後ろの席の水嶋南未(普段は南未と呼ぶ。小学校からの仲良しだ)が声を掛けてきた。
「ううん。今日は持ってきてないや」
「あたしも~!帰る頃まで天気持つか微妙だよね」
南未は同性のあたしから見ても可愛い女の子だ。
ショートでサラサラな少し茶色がかった髪。ちょっと童顔な顔はもちろん。
何より心が素直で真っ直ぐな女の子だ。
最初のコメントを投稿しよう!