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春夏秋冬。日本特有気候。
その内の『春』。
気温も寒くも暑くもない適度適温。
人類が最も快適に暮らせる季節だと僕は思う。
いや、やはり今の発言は度が過ぎただろう。僕は違うが、花粉症の人にはこの季節が苦痛と感じる人は少なくない。なので今の発言は撤回させてもらおう。
緩やかな風を身体に感じながら、僕は今、自転車(ママチャリ)を漕いでいる。
ここはマウンテンバイクでと行きたいところだったが、去年の五月、不慮の事故でただの鉄の塊となってしまったため、仕方がなかった。
目的地に辿り着く。
何の変哲もない、説明をつけようのない絵に描いたような河川敷。
わざわざ街の離れにある河川敷まできた理由―それは、桜を見るためだ。
この街で桜が見れるのは恐らくこの場所だけだろう。
道に沿って、桜の木々が等間隔に生え並ぶ。こう見ると自然も、実に機械的に見える。
空は淡い桃色の葉が、青一色の空を染め上げる。
自転車から降りて引きずるようにして、その道を歩こうとした時、
「あら?らぎさん。」
後ろから聞き覚えのある声。
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