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いつまでも物騒なそれを見続けていられなくて、ミキさんに視線をやる。 『真さん、形見の件は口実でした』 『は?』 『確かに形見をお渡ししたかったのは事実なんですが、折居って頼みがありまして』 『あたしに頼みですか…?』 『…はい。真さんにこの佐倉組を継いで頂きたいのです』 『………はァァアアアア?!なななな何言ってんですか!どうしちゃったんですか!暑さのせいですね!やっぱり!』 『ま、真さん!落ち着いて下さい!』 落ち着いてられっかコノヤロー! 今なんつった? 佐倉組を継いで頂きたい、だと? まさか! 有り得ない!! 『前代未聞の無理な話をしているのは承知です。しかし、佐倉を変えられるのは、剛喜さんの跡目となる人は、真さんしかいないんです』 『だって……、ミキさんが組長さんなんじゃ…』 『情けない話ですが私じゃダメなんです。この通り、剛喜さんがいなくなってからの佐倉は昔とは違う』 辛そうに目を伏せるミキさんに、あたしは何も言えなくなった。 『こんな小さくまとまっちまって…。情けねェ。剛喜さんがまとめていた頃の佐倉は大義に生きた素晴らしい組だったのに』 『………、』 『すっかり若いモンの士気も下がっちまいまして』 ははは、とミキさんが自嘲するような笑いを零した。 『当たり前です。上に立つ私がいつまでも剛喜さんに縋っている。こんなんで士気が上がる訳もありません』 『……、ミキさん』 『どうか考えてみて下さい』 もうあたしはそれ以上何も言わなかった。 いや、言えなかったのだ。 ズシンとこの重圧に押し潰されそうで、ただ前を見ているだけで精一杯だった。
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