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『芳樹のタバコ、あったあった』
自分のタバコと芳樹のタバコを左右のポケットに突っ込んで、リビングを通り過ぎようとした。
『あ、真ちゃん』
『…、なおくん!どうしたの?花火は?』
『ケータイ、忘れたから取りに来た。真ちゃんは?』
『タバコ』
そう言って、チラリとポケットからタバコをはみ出して見せた。
正直、なおくんと二人で話すのは避けたかった。
なんとなく昼間の一件で、あたしは気まずく感じていたから。
『早く戻ろ?美羽、心配しちゃうし』
ちょっと茶化すように言ってみせた。
『ねぇ、美羽ちゃんもだけど真ちゃんも。組の皆に慣れた?』
『……え?うん、慣れたよ』
『仲良くなりすぎじゃない?』
『え……?』
なおくんは真っ直ぐあたしを見つめてる。
まるで射るかのように。
『芳樹さんは若いから、真ちゃん達といると楽しいんだろうけど』
――――……怖い。
なんだ、なんでだ?
『俺らは"ヤクザ"なんだよ』
『わ、わかってるよ…?』
『どこに危険が潜んでるか分からない。真ちゃんが芳樹と関わりを持って行きたいと思ってるなら……』
ゾク、リ。
背筋が凍るかのように感じた。
『それ相応の覚悟を持って』
『…………っ、』
『真ちゃん、気をつけて。コレカラ』
なおくんが、先に戻ると部屋を出て行ってもあたしは固まったまま。
動けずにいた。
"俺らは"ヤクザ"なんだよ"
"それ相応の覚悟を持って"
"気をつけて。コレカラ"
ぐるぐると頭の中を占領するなおくんの言葉。
なおくん。
アナタ、何者なの?
あたしをどうしたいの?
なにが、言いたいの?
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