1184人が本棚に入れています
本棚に追加
『………裏切り者が、いるなんて…』
あたしの声がポツンと響いた。
『違う!!直くんはっ、直くんは裏切り者なんかじゃないよォ!!』
『……美羽、落ち着け』
まどかが美羽の腕を掴み、座らせようとする。
『だって直くんはっ、あんなに優しく笑うんだよォ…?不器用な人だけど、美羽に優しくしてくれる!』
『分かったから落ち着け』
『まどかだって好きな人が疑われたら冷静でいられないでしょ!?』
『そうかもしれない。でも私なら…、疑いを晴らす事を優先する』
『……まどかァ…』
ペタンとその場に崩れ落ちて泣き出した美羽を見て、苦しくなった。
『……あたし、探します』
『まこ、とォ…?』
『柏木組の生き残りを』
泣いてる美羽の前にしゃがんで、背中をさする。
『すまない。一つ、いいか?』
まどかが皆を見据えて、口を開く。
『ああ、なんだい?』
組長さんの返事を聞いて、まどかは小さく頷いた。
『美羽の事を庇うつもりはないが、直くんが"裏切り者"である可能性は低いと思う』
『何故です?』
鉄さんが皆に麦茶をつぎながら、尋ねた。
『もし"裏切り者"ならもっと上手くやると思わないか?柊組を潰すつもりなら、わざわざ真に怪しまれるような事を言うのは賢くないと思う』
『まぁ、そうですね』
『向こうからしたらチャンスは一度。自ずと慎重になるのは明らかじゃないか?』
『それすら裏をかいて計算していたという可能性もありますけどね』
『……ん。今の話は全て可能性の話だから確証は何もないが』
まどかと鉄さんの話にあたしはポカーンとしていた。
えっ、何?
レベルちげェエエエ!!
あたしと芳樹なんか情報を整理しただけで、混乱したのに。
頭のデキがちげーわ。
最初のコメントを投稿しよう!