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**** 『よかったのかい?』 『……麗さん』 組長さん達との話が終わり、まどかと美羽は鉄さんが送って行った。 芳樹はガソリンを入れに行った。 あたしは一人残されて、部屋でゆっくりとタバコを吸っていた。 『麗は嬉しかったさ』 『え?』 『知ってるだろうけど芳樹はねェ、麗のガキじゃないんだよ』 一本くれる?と麗さんに言われて、タバコを差し出す。 『麗と暮らすのも気ィ遣うだろうに、そんな素振りも見せやしない。強い子なの』 『……そう、ですね』 『でもね、いくら強くたって人間って生き物には"心の寄り所"ってモンが必要なのさ』 『心の寄り所、ですか?』 『そうさ。"依存"と"心の寄り所"は違うモンでね、息をつく場所。生を噛み締める場所さ』 ――――息をつく場所。 ――――生を噛み締める場所。 それが心の寄り所、か。 深すぎて、意味ワカンネ。 『この世界は死と隣り合わせ。毎日が非現実的。そうでしょ?』 『確かに非現実的です』 マジで。 あたし初っ端、発砲されたかんね!! 毎日が刺激的すぎて忘れてたけど。 『生きた心地しねェのさ。それにまだ19のガキなのに芳樹は若頭。背負ってるモンがデカすぎて息つく暇もありゃしない』 確かに。 芳樹は背負ってる。 沢山のモノを。 沢山の思いを。 『だから嬉しかった』 『へ?』 『真ちゃんが"守られるだけじゃなく、守りたい"って言ってくれて。その中には芳樹も含まれてるでしょ?』 『……はい、勿論です』 あたしの言葉にホッとしたように麗さんは笑った。 『芳樹を頼むね。コソコソ盗み聞きするようなバカ息子だけどさ』 『え?』 麗さんの視線の先に、バツの悪そうな芳樹がいた。 『……るせェな』 照れたような芳樹の反論は、あまりにも小さくて思わず笑ってしまった。
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