1184人が本棚に入れています
本棚に追加
****
『よかったのかい?』
『……麗さん』
組長さん達との話が終わり、まどかと美羽は鉄さんが送って行った。
芳樹はガソリンを入れに行った。
あたしは一人残されて、部屋でゆっくりとタバコを吸っていた。
『麗は嬉しかったさ』
『え?』
『知ってるだろうけど芳樹はねェ、麗のガキじゃないんだよ』
一本くれる?と麗さんに言われて、タバコを差し出す。
『麗と暮らすのも気ィ遣うだろうに、そんな素振りも見せやしない。強い子なの』
『……そう、ですね』
『でもね、いくら強くたって人間って生き物には"心の寄り所"ってモンが必要なのさ』
『心の寄り所、ですか?』
『そうさ。"依存"と"心の寄り所"は違うモンでね、息をつく場所。生を噛み締める場所さ』
――――息をつく場所。
――――生を噛み締める場所。
それが心の寄り所、か。
深すぎて、意味ワカンネ。
『この世界は死と隣り合わせ。毎日が非現実的。そうでしょ?』
『確かに非現実的です』
マジで。
あたし初っ端、発砲されたかんね!!
毎日が刺激的すぎて忘れてたけど。
『生きた心地しねェのさ。それにまだ19のガキなのに芳樹は若頭。背負ってるモンがデカすぎて息つく暇もありゃしない』
確かに。
芳樹は背負ってる。
沢山のモノを。
沢山の思いを。
『だから嬉しかった』
『へ?』
『真ちゃんが"守られるだけじゃなく、守りたい"って言ってくれて。その中には芳樹も含まれてるでしょ?』
『……はい、勿論です』
あたしの言葉にホッとしたように麗さんは笑った。
『芳樹を頼むね。コソコソ盗み聞きするようなバカ息子だけどさ』
『え?』
麗さんの視線の先に、バツの悪そうな芳樹がいた。
『……るせェな』
照れたような芳樹の反論は、あまりにも小さくて思わず笑ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!