12

2/10
前へ
/141ページ
次へ
ジリジリと肌を蝕む紫外線。 ただ黙って立っているだけで、ダラダラと汗が吹き出す。 『おい、行かねェのかよ?』 『いっ、行くし?!フツーに行くし』 美咲真 じゅーななさい。 只今わたくし、芳樹と一緒に佐倉組の前まで来ています。 だけど、いざ入るとなるとドキドキして決心がつかずにいます……。 自分が情けないっ。 『……あちィから早くしろ』 『ケッ、これだからヤクザもんは!小心者の一般市民のキモチ分かってないねェ』 『ああん?テメー、上等じゃねェか。そのクソ生意気な口塞いでやらァ』 『たっ、たのもー!!』 芳樹の言葉に身の危険を感じて、勢いよく佐倉組の敷居を跨いだ。 あたしマジで小心者です、テヘ。 後ろで"誰かさん"のくつくつと言う笑い声が聞こえる。 非常にムカつく。 ハメられた。 あたしの大きな『たのもー!』に佐倉組の組員さん達が出て来てしまう。 皆さん…、とてもいかついです…。 『……もしや柊組の若さんですかい?』 『ああ、突然すまない』 『そちらさんは…?』 チラリといかつい兄さんは、あたしに視線を送る。 『用があるのはコイツなんだ』 『こちらのお嬢さんがですか?』 訝しげなその視線に、あたしは愛想笑いを返す。 『は、初めまして。美咲真と申します』 ペコリと頭を下げると同時に、額から汗が零れ落ちた。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1184人が本棚に入れています
本棚に追加