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『お願いがあって来ました』
『ほう、なんでしょう?』
『10年程前、佐倉組の当時の組長だった佐倉剛喜について聞きたいんです。あの事故の事が知りたいんです』
『………っ、君は何でその事を知りたいのかな?』
空気が一瞬にして張り詰めた。
それでも、この組長さんは張り付いたように笑顔を崩さない。
カタギのあたしをきっと気遣ってくれてるんだと思う。
『申し遅れましたが、あたし美咲真って言います』
『……みさき、まこと…?』
『10年前は、佐倉真でした』
ざわざわと周りから声がする。
『っ静かにしろ!!』
組長さんが声を荒げる。
ひぃ~…、ヤバイ。
かなりビビった。
寿命縮むから、大きな声出さないでよォ。
『すみません、取り乱しました』
『いいいいえ、だだだ大丈夫です』
うん、全然大丈夫じゃないわ、あたし。
『じゃあ、真さんは…?』
『……あたしは、佐倉組 十二代組長 佐倉剛喜の娘です』
『そう、でしたか。アナタは剛喜さんの娘さんですか。こんなに大きくなられて』
組長さんはフワリと微笑んだ。
『……パパを知ってるんですか?』
『勿論。うちの組は昔から仲が良くて、よく面倒見て貰ってましたよ』
あちこちから啜り泣く声や話し声が聞こえてくる。
パパ。
見てるかな?
こんなにパパを思ってくれる人がいるよ。
10年以上経った今でも。
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