12

9/10
前へ
/141ページ
次へ
**** 折角来たのだからとゲンさんが、夕食を振る舞ってくれる事になった。 魚の焼けたいいにおいがする。 『真さん』 『はい?』 芳樹がトイレへと立った時に、組長さんに話し掛けられる。 『この生業をどう思っておられますか?』 『え…と…、とてもデンジャラスな世界だなぁと』 オブラートに包む作戦、見事に失敗したと自覚している。 あたし、その内KY(死語か)な事言って弾かれそう……。 『どうぞ正直な意見を聞かせて下さい』 ………ですよねー。 この生業って、つまりヤクザでしょ。 どう思ってるかなんて決まってる。 初めて芳樹に出会った日から、あたしのキモチは決まってたよ。 『怖いです』 ってね。 『………え』 『"え"って言いますけどねェ、怖いに決まってるじゃないですか。パパがヤクザだったなんて今まで知らなかったですし』 何度も言うようだけど、あたし初っ端から発砲されてるんだからね!? もし当たってたら、なんて考えたら怖くて震えてくるよ。 『…はは、真さんは正直ですね』 『でも柊組の人みーんないい人なんですよ!勿論、佐倉組の人も!』 まだ出会ったばっかりで、何にもワカンナイくせにと思うだろうけど、暖かさは伝わってくるんだよ。 『見た目はいかついし、怒ると怖いし、筋通せとかビビるし、毎日が現実離れしててチビりそうにもなるけど』 『ははは、良かった。今日はチビってないみたいで』 『皆の事が好きになっちゃったから。守られるだけじゃなくて、大切な人を守れるようになりたいから』 あたしが"美咲真"ってだけで、柏木組の生き残りの千原さんって人は消したくなるのかもしれない。 そして、そんなあたしを芳樹は守ろうとしてくれる。 皆が守ろうとしてくれる。 でも、守られるだけじゃ嫌だから。 あたしだって大切な皆を守りたいから。 『それがあたしの"筋を通す"って事だと思うんです』
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1184人が本棚に入れています
本棚に追加