其の十一

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原田、永倉、斎藤までもが雪緒の言葉を待っているように感じた。 「傷は、残ってるし、治らないと思う。」 ため息を吐きながら答えると、原田の瞳が曇ったような気がした。 直接あの場に居なかった原田だが、意識を失った雪緒の姿を見ている。 その責任を、感じているのだろう。 「治らない傷って………。 ちょっと見せてみろよ。 酷いのか?」 原田に視線を向けていたが、永倉の言葉にハッとなった。 そんなことは、出来るわけがない。 背中の傷を見せるということは、躰を見せるということ。 確実に、女だとバレてしまう。 「はぁ?! み、見せねーよ!馬鹿! 傷なんか見せて自慢する馬鹿は、そこのデカブツだけだ!」 片手で袷をおさえ、片手でビシッと原田を指差した。 「馬鹿だとー?! 俺ァ馬鹿じゃねー!!」 指差された原田は、いつもの調子に戻ったようだった。
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