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震えながら伸ばす腕で晴美の両肩を掴み揺さぶる。
「晴美ちゃん!!晴美ちゃんは…横田財閥の横田…慶子さんの娘さん…なのかい?」
「い…痛いよぉ~お兄ちゃん?」
車椅子の男は、ハッとしたように晴美の肩から手を離した
「はぁ~財ば…?は分からないけど横田慶子はママだよ?
お兄ちゃん?お兄ちゃんってば!!」
男はしばらく茫然とすると、胸元から小さな包みを晴美に渡しす
「晴美ちゃん?これ…大事に持っててくれる?」
「なぁに?これ……ッキャ!!恐い顔してる!!やだぁ!!晴美!!いらないよ!!」
中に入っていた物は恐ろしい形相をした小さな木彫りの人形
「鬼子母神という神様でね?彼女はね悪いことをして子供を隠されたんだ。それで反省した彼女は子供の守り神になったんだよ」
「恐くない?」
恐る恐る聞く晴美に男は優しく笑って頷いた
「僕が作ったんだ……これは…君が持っているんだ。晴美ちゃん……でないと……」
「でないと?」
さわさわと風が吹き、公園の木々がざわめき始める。巻き上がった砂埃に目を瞑った晴美が、次に目にしたものは
燃え盛る公園
穏やかに車椅子に座る男
感情を表さず男の前に佇む女
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