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だれもいない
昇降口の蛍光灯はチラチラとせわしなく点滅していた
「ふっ…気のせい………
短い安堵の息を吐き向き直そうとする晴美の動きが止まる
カタカタと無意識で小刻みに震える晴美の身体
下腹部に感じる違和感
晴美は人形のようにぎこちなく首を動かし視線を移した
晴美が目にしたものは……
下腹部に胎児の胎動を聞くように跪き耳を当てる女
<ネェ…アナダノアガヂャン…
ワダジニヂョウダイ……>
晴美を見上げる朱い目から流れる朱い涙、爪は剥がれ落ち、肉は削れ骨が覗く左手は、晴美の腹に添えられ右手には赤茶けた人形を持っていた
「ぁ…ぁぁ……」
晴美の乾いた喉からは声にならない音が鳴る
女はニヤリとボロボロの歯を見せると、また言葉を発した
<ネェ…………イイデショウ>
「ぃ……いやゃああぁあぁっ!!!」
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