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意識を失いそうなぐらい極寒の夜の町を走り抜け店に戻る。
残っている全員のドライバーが、テンションぶち上がったまま出迎えてくれた。
「笑顔と安全運転で行って参りました!」
この時もいつもと何も変わらない普通の表情で店に入る。
「安全運転は違うだろ・・・」
誰かが小さくつぶやいたような気がした。
「い、稲本お前!マジで配達してきたのか!」
見ると、あれだけ引き止めていた副店長すら呼吸困難を起こしている。
「いやぁ、今日は腹筋鍛えたわ~」
他のドライバー仲間も讃えてくれた。
オレが配達しきった時点で、今回の勝負はオレの勝利が確定する。
いつしか『どれだけ寒さに耐えられるか勝負』ではなく、『どれだけ脱いで配達に行けるか勝負』になっていた。
本当はもう1人ドライバーが居たのだが、オレが葉っぱ1枚で配達に行って帰ってきた時点で敗けを認める。
「寒さ我慢勝負とかもう関係ねえし(笑)俺全裸で行くしか勝つ方法ねえじゃん」
誰からか女性モノの下着のみで配達に行くという案も出たのだが、その時点で主旨が完全にズレていた。
当然最後のドライバーからも却下される。
さすがにオレも女性モノの下着のみで配達は勇気がいる。
葉っぱ一枚もあまり変わらないっていう話もあるが・・・
何よりすぐに調達できない。
女子店員は誰も貸してくれなかった。
当たり前か(笑)
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